白装束集団とテスラ
 2002年の4月から5月にかけてマスコミを騒がせた「パナウェーブ研究所」とテスラに関して書いた文章を一カ所にまとめてみました。カルト教祖に率いられたカルト教団の馬鹿騒ぎにすぎないと早い時期に気づきましたが、テスラの名がいろいろ取り沙汰されたので看過できなくなりました。急いで書いたものが多く、内容的にはあまりおすすめできませんが、なにかの参考になればと思います。
日 付
  • 旧ソ連製電磁波兵器の出所は(5.5)
     白装束集団の女ボス(白ボス)が恐れている旧ソ連製のスカラー電磁波兵器の出所は、多分、ベアデンの次のような発言でしょうね。

    「ソ連はかなり以前から、テスラ・スカラー波効果を発見し、兵器化して来たのである。・・・・・・それらの兵器のひとつは、テスラ曲射砲で、最近サリシャガン・ミサイル射撃場で完成したものであり、現在高エネルギー・レーザーか、粒子ビーム兵器のいずれかであると考えられている」(トマス・ベアデン「ソ連のテスラ究極兵器とフリー・エネルギー構想」『UFOと宇宙』)

     ベアデンによれば、この兵器は高エネルギー・レーザーや粒子ビーム兵器などではない。その実体はスカラー波(テスラ波)を用いて、あらゆる物体を透過し、目標を瞬時に消滅させられる究極の破壊兵器である。これによって既存の兵器はことごとく無効になる・・・・・・。
     旧ソ連が苛電粒子ビーム兵器を研究しているという話題は、レーガン大統領の時代(つまり1980年代)に繰り返し出ました。米軍の偵察衛星がたしかな証拠をつかんだという噂まで出回りました。
     だが、冷戦が終わってみれば、兵器の実験施設と目された施設は単なる研究施設であったことが判明したりして、噂も立ち消えになってしまいました。
     白装束がソ連の電磁波兵器とかスカラー波兵器とか言っているのは、このあたりの時代にオカルト科学にはまった人間がいて、白ボスに吹き込んだり、白ボスの言葉を勝手に解釈したりしているのでしょうね。


  • スカラー波でてるかなー?(5.4)

      出てないだろうなー。


  • あのぐるぐるマークって、やっぱり多波振動子?(5.2)
     
       ↑多波振動子の回路図


     あのパナ研のぐるぐるマークって、ロシアの発明家ジョルジュ・ラコヴスキーが1920年代につくった万能治療器「多波振動子」(MWO, Multi-Wave Oscillator)に似てますよね。
     ほら、こうやって角度を変えるともっと似てくる。
     多波振動子は最近も電気治療の研究者などによってつくられていますから、おそらくもっと近い図がどこかにあると思うんですが。ちょっとさがしきれていません。
     もしあれが多波振動子だとすると、あのマークの意味はスカラー波除けだけでなくなります。同時に教祖の末期ガン治療の意味もあると思うんですがどうでしょう。
     さかのぼってみると、ラコヴスキーの多波振動子のルーツは1920年代にフランスで盛んになった高周波治療にあるんですよね。その高周波治療のルーツがテスラとテスラコイルにあるというのは、テスラファンならよくごぞんじでしょう。現に多波振動子自体、テスラコイルの一種なんですよね。
     ということは、やつらはテスラが発見したスカラー波(テスラ波)による攻撃を、やはりテスラが発見した高周波治療やテスラコイルで防御、治療しようとしていることになります。なんか妙な話で、テスラが知ったら驚くでしょうね。


  • スカラー波について、ちょっと解説(5.2)
     スカラー波について「テスラ小事典」の特別版として少し書いてみました。あまりうまくまとめられませんでしたがご参考までに。また、ご意見がありましたら参考にさせていただき、適宜修正していきたいと思います。(現在改訂中です)


  • テスラ波でなくてよかったー(5.1)
     パナウェーブ研究所(通称「パナ研」)騒動で「スカラー波」というオカルト用語もすっかり定着してしまいました。今年の流行語大賞といった声も出ているようです。
     オカルト科学の世界では、テスラが発見した「テスラ波」を弟子のヘンリー・モレイが発展させ、それを理論的に集大成したのがトマス・ベアデンのスカラー波だということになっています。そのためテスラ波とスカラー波はほぼ同義に使われています。教団関係のHPでもテスラー波(テスラ波)という用語が頻出していました。
     彼らが記者やレポーター相手に、テスラ波、テスラ波といっていれば、それが定着してしまった可能性もあったわけです。
     考えてみれば、これは怖い話です。日本ではまだ無名のテスラの名が、カルト教団のイメージとともに広まるわけですから。それでなくともオウム真理教事件で、地震兵器やプラズマ兵器などとの関係で取り沙汰され、マッドサイエンティスト的なイメージがついているところに、さらに追い討ちをかけるようなものです。
     これがエジソンの「霊界通信機」ならいいでしょう。すでに評価の定まったエジソンなら、発明王にもそんな一面もあったのかですんでしまいますから。テスラの場合は発明家・科学者としての評価がまだ不充分ですから、それ自身、大きなダメージになることが予想されます。
    「ニュースステーション」のコメンテーターが、パナ研とオウムに共通する発明家としてテスラの名をあげ、彼らの危険性を指摘していたくらいですから。
     なぜ、テスラはこうもオカルティストたちを惹きつけるのでしょうか。これはテスラ研究の大きなテーマのひとつですが、責任の一端はテスラ自身にもあったと言われています。
     一言でいえば、テスラの電磁波理論はエーテル理論の残滓ともいえる異端の部分を含んでいました。たとえば無線送電や無限エネルギー発生装置のような発明は、未知の電磁波(縦波の電磁波)の存在を仮定していました。この部分はテスラ研究者の間でも、テスラの誤解だったとされている部分です。
     ただ、天才も人間である以上、絶対に間違いを犯さないということはありえません。アインシュタインは量子力学を評価できませんでしたし、エジソンも交流を理解できませんでした。テスラもこの部分では間違ったということです。
     テスラが電磁波の研究に着手した1890年ころには、電磁波の理論的探究はまだ端緒についたばかりでした。その後、理論化と実用化が平行して進められていきましたが、その本質については研究者の間にも大きな混乱が見られました。
     だれよりも早く無線の実用化を信じたテスラもそのような混乱を共有しつつ、無線の基盤となる技術を次々と開発していったのです。そのことをまず評価すべきなのに、ベアデンのようにあらぬ可能性に手を突っ込んで、それが最大の業績であるかのように言い立てるのは迷惑以外の何者でもありません。
     長くなりました。テスラとオカルトの関係については、魔術をキーワードに科学史や文化史の視点からも論じられると思っています。これに関してはまた後日ということで。


  • 大槻先生がんばれ!(4.30)
     敬愛する大槻義彦先生がテレビ朝日やTBSに登場して、あの渦巻き模様やスカラー波について説明していました。わたしは科学学徒として揺るぎない信念をもつ大槻先生を日ごろから尊敬し、その発言をいつも高く評価しているものの一人です。今回も明快にトンデモ科学を切っていてすっきりしまた。ただ、1,2カ所、首をひねったところもありました。
     たとえばあの渦巻きマークを干渉縞と説明していたようですが、わたしの勘違いでなければ、テスラコイルでよく使われるフラットコイルと見たほうがよいのではないでしょうか。あるいはオカルトの世界ではガン治療器として有名なラコヴスキーの多波振動子のほうが似ているかもしれません。
     またスカラー波を静電気と言い切ってしまったのもどうでしょうか。スカラー波とはいわゆる縦波のことで、音波や地震のP波などを含む概念ですから。
     大槻先生にはあくまでも「スカラー電磁波」というトンデモ概念として批判してほしかったと思います。「電磁波はベクトル波であり、スカラー電磁波などというものは存在しない」とか。
     まあ、テレビ的にカットされてしまったのかもれませんが。(先の文章が真意を伝えきっていなかったので、少し訂正しました。)


  • 大槻教授もビックリ、火の玉の原因はプラズマではなくスカラー波(4.30)
     スカラー波の提唱者トマス・ベアデンは、球電(いわゆる火の玉)の生成原因はスカラー波にあると主張している。自然の中にあるスカラー波(自然スカラー波)が干渉しあって発生するのが球電だというのである。
     球電の人工的生成の最初の成功者がテスラであることは、球電現象研究の世界的権威大槻義彦教授も認めている。
     1899年、テスラはコロラドスプリングズでテスラコイルの実験中、室内を漂う球電を目撃したのである。テスラ自身はその原因が電磁波にあるのではないかと述べただけだが、ベアデンはテスラはこれにヒントをえてスカラー波の発見にいたったのではないかと勝手な憶測を述べている。
     スカラー波が火の玉の原因。火の玉の生成原因はプラズマであると断固主張する大槻先生が聞いたら、怒り心頭に発する発言だろう。


  • 70年代オカルトムーブメントの遅れてきた帰結(4.30)
     白装束の一団ことパナウェーブ研究所(「千乃正法」)が相変わらずマスコミを騒がしています。今さらオウムを引き合いに出すのもはばかられますが、この教団がオウムと同じ時代的空気の中で成長してきたことは間違いありません。その空気とは1970年代から80年代のニューエイジやオカルトのブームです。
     スカラー波、テスラコイルを使った旧ソ連の破壊兵器などは、まさにその時代にオカルトメディアの主役の座をつとめたアイテムでした。その意味で、白装束団は新しいムーブメントではなく、むしろ過ぎ去った時代の生き残りなのです。
     オウムは90年代半ばテロにより自壊しましたが、それから8年後、この教団は相変わらず日本の山野を亡霊のように彷徨い続けています。そこに終われない時代の悲劇を読み込むのは過大評価でしょうか。
     この教団をめぐる騒動(悲劇というよりは喜劇ですが)については、70年代オカルト運動の遅れてきた帰結として、「テスラ伝説」の事後談として、近々、少しまとまった文章を書いてみたいと思っています。その中でテスラ研究のお荷物であるスカラー波の問題についても決着をつけるつもりです。


  • 白装束の集団はスカラー波とテスラを強引に結びつけるのをやめよ!(4.29)
     最近、白く塗装した車で日本各地を放浪する白装束の一団がマスコミで話題になっています。彼らは白い塗装や白装束は白い色に有害な「スカラー(電磁)波」を防ぐ働きがあるからだと説明しています。
     驚いたことに、週刊誌によればたまちゃんブームで話題になった「たまちゃんのことを想う会」もこの集団と関係があるとのことです。
     白装束の正体は「パナウェーブ研究所」という電磁波研究団体で、その正体は「千乃正法」というカルト教団だそうです。新手のカルト教団の登場ですが、困ったのは彼らがスカラー波を発見したのはニコラ・テスラで、スカラー波=テスラ波だと主張していることです。
     パナウェーブ研究所のHPなどを見ると、出典は以前から独自の「スカラー電磁重力理論」を唱えているトマス・E・ベアデンのようです。アメリカの退役技術将校であるベアデンは1970年代から、テスラの電磁波理論の中核は縦波のスカラー波にあり、これと横波のベクトル波が合体したものが電磁波であると主張してきました。また、旧ソ連がこの理論に基づいて、究極の兵器であるスカラー兵器(テスラ兵器)を開発しているとも主張してきました。
     しかしベアデンの理論は、テスラの理論的発言のうち、テスラ自身にも誤解があった異端的発言を拡大解釈したもので、まともなテスラ研究者からはほとんど相手にされていません。
     オウムの地震兵器といい、今度のスカラー波といい、テスラの名がカルト教団とともに語られるのはテスラ啓蒙活動を進める当研究所にとってもはなはだ迷惑です。
     そこで、あらためてニコラ・テスラとスカラー波はまったく関係がないことを確認するとともに、当該集団に対しては、今後、自分たちの主張とテスラを強引に結びつけることをやめるよう強く求めたいと思います。




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